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心通うトキ

大抵は共に同じ任に就くから、俺達は本当にくされ縁で、傍に居るのが当たり前で。
けれどごく稀にこうして、仕事で長い期間離れることがあると、逆に相手を思う時間が増える。
安否を心配しているのではなく…ただ視界に入らない、漠然とした不安から、気がつくと思い耽っていて。
…俺の人生は、どれだけ、あいつで支配されているのだろう。
半分…いや、それ以上?
そしてこの現象は相手も同じであることを、俺は確信を持てるのに。
あいつはそうじゃないらしい。
長く離れていても、俺はあっさりしていると。
お前、本当にそう思ってんのか?
「……解ってるんだかいないんだか……」
原因は俺自身にも確かにあるけれど。
…どうしてそこだけ、抜けているんだ…あいつは。

戻ってきて城に俺が居なければ、あいつは必ずここに来る。
先に戻った俺は、だからここに籠る。絵を描きながら。
……城で再会するよりずっと、
ここでは…俺は素直になれるから。



* * *

静寂に訪れる、馬の蹄の音。
徐々に近づいて…止まる。
(…来た)
俺に遅れること2日。
無事帰ってきたようだ。
…心臓が、高鳴る。
扉を見つめながら、息をつめる。
どうしてこんなに緊張するのだろう。
…たかが、1ヶ月振りに会うだけなのに。
ノックが2回。
俺は立ち上がる。
…が、こちらからは開けない。
あいつが開くまで—…。

ガチャ…キィ…。

「……」
「……フォルデ…」
真っ直ぐこちらを写し、俺の名を呼んだきり動かない相手に、俺は軽く笑みを浮かべてゆっくり近づいた。
「…お帰り、カイル。無事で何より」
「…あ、ああ…。お前もな」
そう言ってカイルは、深く息をついた。緊張を吐き出すように。
同時に俺も、肩の力を抜く。
「お前はどうして…いつも城に居ないんだ」
「………」
まだ解らないのか?
…いや…多分解ってるんだ。
それでも、言わずにはいられないくらい…。
「俺は…一刻も早く…お前に…」
「…ああ…俺も」
小さく呟いた俺の言葉をきっかけに、カイルは俺を抱き締めた。
「…会いたかった…フォルデ」
「………」
すぐ傍で囁かれる言葉と、力強い腕の温もりを感じながら、俺は相手に体重を預けて瞳を閉じる。
この瞬間が、堪らなく愛おしい。
「…カイル…」
相手の名が自然と零れる。両腕は、相手を抱き締め返す。
いつまでだって、こうしていられるけれど。
心地よくて、安心感が広がって…離れ難くなって。
俺達はより一層、互いが欲しくなる。
どちらともなく顔を上げて、深いキスを交わして。
それからカイルが、耳元で囁いた。
「…このまま…続けても…いいか?」
「っ……」
ああもう。
そんな声で聞かれたら、拒否なんてできないだろ。
…もっとも、俺にそのつもりは全くなかったわけだけど。
「律儀に確認、するなよな…」
「……あ…いやでも…」
「分かってる。…いいから…」
そう言って俺は、カイルの頬に軽くキスを落とす。
「……フォルデ…」
…それからはもう、堕ちる一方だった……。

* * *

「…明日はどこか、遠乗りに行くか」
唐突に、カイルが言った。
俺は閉じていた瞳を開いて、すぐ傍の相手の顔を見た。
「…構わないけど…どうしたんだ?急に」
「いや…お前はどうせ籠もりきりだったのだろうと、今考えていたから」
「…そりゃ…」
お前を待ってたんだから、という言葉は飲み込んだ。
だから言ってるのだ。
するとカイルは微笑んで、俺の髪を軽く梳くと、やっぱりこう言った。
「…分かってる」
「……」
妙に気恥ずかしくなって、俺は再び目を閉じて…シーツに少しだけ顔をうずめた。
「…じゃあ、今日はもう寝る」
「……ああ、お休み」


fin.

コメント

ああっ…何か甘…く…ラブらせたい時もあるさ…。(多分一人称の所為)
……絵板に落描きった時にイメージで冒頭の独白を書いたら、何だか続いちゃいまして。
そのまま素直路線でいったら、こう…最後なんだろう…お、オトm(略)
「ここ」というのは、例の小屋です。(「hiding place」参照)
フォルデは来る者は拒まない…そしてフェミニストだから、カイルは色々な意味でやきもきしていると思われw
でもカイルが思っている以上にフォルデはカイルをちゃんと想っていて。
…そんなお話でした。

(2005.9.30)

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